00797-070109 コンピューターをコンピューターと呼ばなくなる日
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The first 30 years were just the beginning. Welcome to 2007.
(最初の30年はただの始まりだった。2007年へようこそ。)
年明けからこんなフレーズをサイトのトップに掲げたアップルの2007年。これからの30年に向けてアップルがどんな展望を見せてくれるのか。9日から始まるMacWorld Expoは、そんな期待で幕を開けました。
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今回の基調講演で最も印象的だったのは他でもない、Steve Jobs氏、その人。
新しい時代を自分(たち)が切り拓いているんだ、という喜びと興奮が、ほとばしり出ていました。なので、今回のエントリーは彼をアップで撮った写真を中心に構成しました。彼の表情をとくとご覧ください。
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撮影はEOS 20D、70-200mm F4(手ブレ補正なし)。手持ちです。
シャッタースピードは1/40から1/160まで。F値は開放(F4)に固定しています。ISOは1600です。
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これまでの30年とこれからの30年。
何が違うか。
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それは、今回発表されたアップルの社名変更に象徴されています。
Apple Computer Inc.から、Apple Inc.になりました。
アップルはコンピュータ会社ではなくなったのです。
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今回、発表された中で最も大切なのは、やはり、この社名変更でしょう。
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考えてみれば、いまやほぼすべての家電製品はコンピューター。内部にある演算装置を使って、各々の制御を行っています。でもそれらはいずれも「コンピューター」とは名乗っていない。普通、その機械の目的が名称になっている。「炊飯器」はご飯を炊く機械。「冷蔵庫」は食料などを冷蔵するための機械。「電子レンジ」「掃除機」「テレビ(ジョン)」「携帯電話」……。ほとんどのものは内部でコンピューターが制御しているしOSが入っているものもあるけれど、「コンピューター」とは名乗っていない。コンピューターは単に内部の回路が司っている機能、すなわち手段なのであって、その機械の目的ではない。
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一般市場で売られている製品のうちで「パーソナルコンピューター」だけが、長年、「コンピューター」と呼ばれ続けてきました。それは、いろんなことができすぎるため、単一の目的を明確化できないから。
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でも、アップルはそれを単なる「コンピューター」ではなく、もっと明確な目的を持ったツールに変えようとしてきました。そして実際に変わってきました。それがMacの歴史です。
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今、ようやくそのコンセプトに合わせるべく、社名から「コンピューター」をはずしたのです。
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そのコンセプトは、いわば「iを伸ばすツール」といった感じ。
(これに関係することは、MacPeopleの次号(3月号、1月29日発売)の連載に書きました)
昔からアップルが持っているコンセプトです。「知的自転車」。ヒトは、自転車という道具を使うだけで、少ないエネルギーで何倍も速く移動することができる。その自転車の知的バージョンがMacというわけです。
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いままでも、Macは「パソコン」ではなくあくまでも「Mac」だ、と認識されてきたのは、こういうコンセプトに基づいて作られているから。「コンピューター」という抽象的な存在ではなく、少しでも具体的な意味と目的を持つように考えて、いわゆる「i」アプリケーションとともに作られてきたのです。
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アップルはMacの意味を明確にしていくと同時に、iPodというもとより目的の明確なツールを世に出し(昔は QuickTakeというデジタルカメラなども出していました)、人々の需要を喚起しました。そして今回、iPhoneとApple TVで、同じように目的の明確な機器を出すと発表。そのタイミングで、ただの「コンピューター会社」ではないことを宣言したのです。
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MacにiTunesを載せることで、音楽の聞き方を変え、iPodでそれを外に持ち出せるようにし、iTunes Storeで直接音楽を買えるようにした上、そこで扱う範囲を映画やテレビ映像にまで広げてきました。それらを基盤として、iPhoneは成り立ちます。過去、いわゆるPDAがいくつも盛衰し、いまや携帯電話がその機能を担っている中にあって、これだけのハード、ソフト両面のインフラを整えたアップルがその利便を携帯電話に広げることは、むしろ必然、あるいは悲願だったに違いありません。そもそも「PDA」とは、アップルのことばですから。
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こうしてアップルは、「明確な目的を持ったツール」をまたひとつ増やしました。同時に、「パーソナルコンピューター」であるMacを使う目的もまたひとつ、増やしました。iPhoneを使うプラットフォームという目的を。
コンピューターがコンピューターと呼ばれなくなる日への道のりを、また一歩、前に進んだのです。
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<他社のプレゼン中、舞台袖で控える>
でも両者は実は相対的です。
「レンズ付きフィルム」と呼ぶか、「使い切りカメラ」と呼ぶかによって、マーケティングが大きく左右されるのと同じこと。「明確な目的」である「電話」にコンピューター的機能がついたか、小型の「コンピューター」に電話機能をつけたものとして売るかで、消費者の反応は全く異なるはず。求められる性能・性質、そしてその製造者としての責任もまた、全く異なります。アップルは「明確な目的」を持った一般消費者向けの製品を本気で製造、販売することを、社名の変更によって高らかに宣言したのです。
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<Apple Inc.発表>
Apple Inc.への社名変更を聴衆に告げたときのJobs氏は、本当に嬉しそうでした。基調講演の中でも、「昨晩、眠れなかった」と話していました。自分が作った会社の名前を、このように前向きにシンプルに改名し、人々にパラダイム転換を告げるのは、感慨深かったことでしょう。彼の表情がそれを物語っていました。
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<基調講演終了>
これからのJobs氏、これからのApple Inc.が、ますます魅力的に輝き、人々の生活を豊かにしていくことを楽しみにしています。アップルで仕事をされている方々に、心から賛辞と感謝を申し上げます。どうもありがとうございます。
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今回のMacWorld Expoの写真、1700枚以上撮影したのですが、その一部334枚程を下記にアップしてあります。どうぞご覧ください。
なお、フル解像度のファイルは別にしてあります。
フル解像度のファイルが必要なプレスの方には提供させていただきますので、ご連絡をいただければ幸いです。